7月大歌舞伎 松竹座 盟三五大切
とにかく仁左衛門が素晴らしかった。
6年ほど前に松竹座で「仁左衛門 昼夜の仇討ち」として「彦山権現誓助剱」と一緒に上演されたが、今回のほうが上を行った演技だったと思う。更に過去に見た仁左衛門の中でベストに近いものでは無かっただろうか。
仁左衛門については、その見た目の美しさに惹かれることが多いが、彼の美しさというものは努力と鍛錬の上で得たものだということをひしひしと感じた。
役に入り込んだ上で、観せている。どの役者より、遠くの観客を意識しているように見えた。演技が大きいのだ。
前から6列目で見たにも関わらず、むしろ遠くから見るべきだったと後悔するほどだった。仁左衛門の意図した演技は3階席にも充分伝わっただろう。
盟三五大切は、共感し難い話である。つまらない痴情で多くの人を殺める源五郎が、義士に加わる。むしろ悪役だった三五郎は旧主のために人を騙していたのに全ての罪を被って死んでいくという、なんともスッキリしない話だ。
しかし、その場その場の感情を大きく表現することで、観客は源五郎に共感し、納得し難いストーリーが腑に落ちる。仁左衛門の説得力は言葉に尽くせないものであった。
松也の六七八右衛門は実直で非常に好感が持てた。染五郎もなかなか、ああいう悪役が好きなんだろうなと感じた。とにかく3人とも楽しそうだった。染五郎は、本当は源五郎のような役が好きそうだなといつも思っている。染五郎にもやって欲しいところだが、しかし仁左衛門以外で観たいとも思えない役の一つでもある。難しいな。
薩摩源五兵衛 = 片岡仁左衛門(15代目)
笹野屋三五郎 = 市川染五郎(7代目)
若党六七八右衛門 = 尾上松也(2代目)
芸者菊野 = 中村壱太郎(初代)
ごろつき勘九郎 = 嵐橘三郎(6代目)
仲居頭お弓 = 上村吉弥(6代目)
富森助右衛門 = 松本錦吾(3代目)
芸者小万 = 中村時蔵(5代目)
家主くり廻しの弥助・出石宅兵衛 = 中村鴈治郎(4代目)
同心了心 = 片岡松之助(4代目)
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