シャネル&ストラヴィンスキー

喧騒と騒音。

20世紀はそんな音楽で幕を開けた。

後期ロマン派は衰退し、19世紀後半から独特なハーモニーとリズム感でドイツ音楽とは一線を画したフランス音楽は、徐々にその姿を変えて行く。

ストラヴィンスキーも、その渦の中にいた。いや、むしろ渦の中心にいたのかもしれない。

ロシア革命の最中、大勢のブルジョアはパリへ向かった。フランスでバレエ・リュスが花開いたのはそのためだ。それらのプチリュスは、パリのサロンに大きな影響を与えた。



シャネルは多くの芸術家を支援していた。コクトーやディアギレフ、ピカソ。その中の一人にストラヴィンスキーがいる。

バレエ「青列車」はピカソの美術、コクトーの台本、シャネルが衣装をデザインした作品だ。

芸術のコラボレーションというのはこの辺りが始まりだろうが、その中でシャネルが果たした役割は意外と大きいようだ。

彼女が女性であり、洋服屋であり、高級娼婦のような生き方をしたために、不当に貶められているように思わないでもない。



ストラヴィンスキーとシャネルの関係は、フィクションなのかノンフィクションなのかわからない。

ただ二年間、彼がシャネルの館で過ごしたことは本当らしい。

二人が深刻な恋愛関係でなかったとしても、それなりの関係はあったと考えるのが普通だろう。

映画ではシャネルとストラヴィンスキーの妻の確執、ストラヴィンスキーとシャネルの互いの芸術への邁進ぶりをドラマとして描く。

正直、多くの芸術家というものを見てきて、「恋愛を糧に」する芸術家を見たことが無い。

多くの芸術家は確かに手癖は悪いが、恋愛以外のものを糧にしているケースが殆どだ。

恋愛は彼らの芸術に添える、仇花でしかない。





映画の冒頭で披露される、限りなく初演に近い「春の祭典」も見もの。

また、カールラガーフェルトの協力の元、公開されたシャネルのメゾンも見ごたえあり。

音楽は21世紀に再生しているので、まぁ、ちょっと21世紀風ではある(笑)どちらにしろ、なかなか聞くことのない作品も劇中で流れており、かなりの興味をそそられる。

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