ペール・ゴリオ



「ペール・ゴリオ」では何のことかわからなくても、

「ゴリオ爺さん」と言えばわかる方も多いのかも。

訳者の鹿島茂が「爺さん」の話は読みたくないだろうと、本作はあえて「ペール・ゴリオ」にしたという。

この藤原書店から数年前に発刊された「人間喜劇セレクション」は、訳が悪い・誤訳が多いと評判が悪いものの、新訳なので読みやすく・挿絵が入っているので当時の文化がうかがえるという点では楽しめる。



さて、こういった古典を読んでいるとインテリ的と思われがちだが、実は読み物として十分楽しい。

19世紀フランスにおける社交界のあり方、結婚と持参金の制度は昼ドラのよう。

展開も早く、オペラアリアかと思うほどに、死に際や警察の包囲をもろともせず大演説を始める登場人物たち。

非常に男っぽく(しかも美青年にしか興味がない)悪党のヴォートラン、社交界の寵児としてのしあがる事を決意したラスティニャック、社交界の華でありラスティニャックの遠縁にあたるポーセアン子爵夫人、父親に認知されないばかりに貧しい生活を送るヴィクトリーヌ、そして主役のゴリオと、魅力的な人物ばかり。

バルザックは「ペール・ゴリオ」から人物再登場法を意識して用いたので、多くの登場人物には過去と未来を背負っているから、こんなにも魅力を感じるのかもしれない。

そして、ヴォートランもラスティニャックもヴィクトリーヌも、「あれ?この人たちどこ行くん?」と思わずにはいられないところで、物語は終わってしまう。

「幻滅」や「娼婦の栄光と悲劇(浮かれ女盛衰記)」などは、「ペール・ゴリオ」の続編と言えるらしい(まだ読んでない)

あぁ、続きが読みたい!



しかし、バルザックはタイトルがひどいと思う。

「従妹ベット」「従兄ポンス」に至っては、いい加減につけたとしか思えない。




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